今回は、「海外で働くと、仕事やその後の人生にどのような影響があるのか?」ということを考えてみたいと思います。
以前海外勤務をしたことがある筆者の考えは、「海外で働くことは容易ではありません。しかし機会があれば挑戦をおすすめします」というものです。
理由は、「誰でも経験できるものではないから」です。
詳しくは以下で海外で働くことのメリットや「大変さ」を見ていきます。私の経験談も交えたいと思います。もし読者の中で「海外で働く」ことを考えている人がいれば、本記事をお読みください。
海外で働くには、外資系企業への転職がベストです。この点についても解説します。なぜなら、外資系企業で働くことは、日本であれ海外であれ、本質的に同じことをやる必要があるためです。
海外で働くメリット
海外勤務のメリットは幾つもありますが、筆者が考える主要な項目は以下の3つです。
- 外国人を特別視しなくなる
- 仕事に対する自信がつく
- 語学力が向上する
外国人を特別視しなくなる
私が海外で働いて一番感じたメリットです。ではなぜこれがメリットなのでしょうか?
米国で働く前は、「すべてのアメリカ人はスマートで、合理的に行動する」と思っていました。(今思えば笑ってしまいますが…)しかし実際に滞在してみて、その考えは間違いだと思い知らされました。
確かにアメリカ人の中には非常に優秀でスマートな人がいます。しかしそうでない人も多くいます。その当たり前のことに気がついたあと、物怖じせずにアメリカ人と付き合うことができるようになりました。また、アメリカ人だけでなく、他の外国人でも同じと認識できました。
仕事に対する自信がつく
海外で働くことは、「環境が大幅に変わる転職をする」のと同じです。現地の生活環境に適応しながら、現地企業で仕事をこなさなくてはなりません。
私は現地雇用の社員としてシリコンバレーの米国企業で働いていました。日本の外資系企業から、その会社の本社への転籍でしたが、仕事内容や役割が変わりました。そのため、米国に行ってからかなり苦労しました。
初めてこなす職務に加えて、仕事量が多く、米国人とのやりとりにも不慣れだったので、毎日がストレスの連続で、逃げ出したい気持ちが大きかったです。
しかし、その時に苦労してやったTo Doリストをもとにしたマルチタスク処理や、プロジェクト管理、メールのやり取りなど、今にして思えばその後の仕事に役に立つ方法をそのときに身に付けることができました。同時に、「自分でも米国人と同等に仕事ができた」という自信を持つことができました。
これが私自身の財産となっています。
語学力が向上する
これもメリットです。現地で生活していると、朝から晩まで英語に触れなければなりません。イヤでも現地の言葉に慣れ、語学力はあがります。特にヒアリング力は顕著に向上します。
ただ、語学力は自然に上達するものではなく、工夫は必要です。
例えば、朝晩のニュースを見る際に、「字幕」をオンにして見ます。最初のうちは、話している内容がわかりませんでしたが、字幕を見ながら聞くと、「こういうことを言っているのか!」と徐々にわかるようになります。単語が分からない場合は、辞書を引きます。(今はネットで調べますが)
ニュースだけでなくドラマも見るようになりましたが、スラングが多くて日本人には分かりにくいです。しかしこれも何度も見ているうちに、完璧ではなくても大体わかるようになります。
海外で働く際に大変なこと
海外で働くメリットがある一方で、「大変なこと」も幾つかあります。筆者が感じたのは以下の点です。
- 仕事の問題
- 言葉の問題
- 環境への適応
仕事の問題
仕事をうまくこなせないと雇用が脅かされ、最悪レイオフの対象になります。
現地社員は、米国企業により現地で雇用された人なので、扱いは米国人と全く同じです。現地社員は米国人と同じくレイオフの対象になります。
異国でのレイオフは、日本でのレイオフとは比べ物にならないくらい大変です。
米国の場合、もし本人にグリーンカード(米国への出入国は自由で、滞在にも期限がなく、職業も自由に選択できるビザ)を持っていない場合は、レイオフになると即座に日本に帰国しなければなりません。
言葉の問題
これはメリットである「語学力の向上」の裏返しです。
現地に滞在して語学力の向上に励めば、それなりに上達しますが、ネイティブ並みに完璧にマスターできるとは限りません。
米国人が会議等で話している内容を100%理解できないと、頭では100%理解する必要はないと思いつつも、知らず知らずのうちにストレスが溜まります。
前述のように、自分で工夫して語学を習得することが大事です。
環境への適応
海外での生活は、仕事以外の生活面での適応も必要です。
例えば食事、医療、テレビ、車の運転などは、日本での生活とは大幅に異なることがあります。
食事については、現地の食事に慣れることが必要ですが、やっぱり日本食が恋しくなります。
米国であれば日本食や中華レストランもありますが、米国人向けの味付けになっており、おいしくないところもありました(例外はあります)。日本のスーパーもシリコンバレーにありましたが、日本の食材は高価でした。
また、意外と見落としがちなのが健康保険です。日本の国民皆保険制度がない米国では、医療費も健康保険料も高いです。
海外生活で家族は一番の支えになります。私も米国滞在中は家族の理解に助けられました。
また、現地で日本人の知り合いを作ると良いでしょう。同じように海外生活に不安を持っている人もいますので。子供がいる人は、日本人向けの学校を通して知り合えますし、同じマンション住人に日本人がいれば知り合いになれます。
海外勤務を実現するには?
海外勤務を実現する方法は幾つかありますが、私のおすすめは「外資系企業」に転職することです。外資系企業では、一般に社内向けにさまざまなポジション(職務)募集があり、社内で一定の実績を残せば外国でのポジションに就くことも可能です。
私自身、そのようにしてアメリカにわたり、本社勤務したことがあります。また、20年以上の外資系企業勤務のなかで、日本支社から海外本社への移籍をした人たちはたくさん見てきました。
外資系企業では「ジョブ型」雇用が採用されている
以下、外資系企業について解説します。以下の内容は、日本であれ、海外であれ、基本は変わりません。
外資系企業では、ジョブ型の雇用形態が採用されています。これは、ポジション(職務)に対して人を割り当てる方法です。(これに対して、日本企業では一般に「メンバーシップ型雇用」が採用されています)
例えば、Webマーケティングのポジションに空きがでた場合、外資系企業はそのポジションに合う人を募集し、採用します。
外資系企業では、入社後は即戦力としてすぐに仕事で成果を出すことが求められます。募集ポジションでのスキルや経験を既に持っている人が応募の大前提になります。
外資系企業への転職メリット
外資系企業への転職メリットはいくつもありますが、代表的なものは以下になります。
- 給与・待遇が良い
- 自分の職能・スキルを高められる
- 年功序列によらない昇給、昇進ができる
給与・待遇が良い
会社により違いはありますが、一般に給与は外資系企業のほうが高いです。また、会社によってはストックオプションやRSU (Restricted Stock Unit) などの待遇が充実しており、業績によりさらに高給を得ることもできます。
職能・スキルを高められる
前述のとおり「ジョブ型雇用」が採用されていますので、例えばWebマーケティング、営業、システムエンジニアなどの職務スキルに専念できます。
そのため、そのポジションで長く仕事をすればするほど、経験値も上がりスキルや技能を磨くことができます。
また、同じポジションであれば、他社への転職も容易になります。
年功序列によらない昇進・昇給
仕事で結果を出せば、昇進や昇給も容易になります。基準は「業績」や「成果」であり、年齢や社歴は基本的に関係ありません。実力があれば活躍できるのが外資系企業です。
外資系企業で大変なこと
なるほど。外資系企業への転職にメリットが多いのはわかったけど、デメリットはどうなの?
外資系企業に勤めて大変なこともいくつかあります。ここでも代表的な例を見てみましょう。
- リストラはいつでも起こりうる
- 吸収合併のリスクがある
- 自分の責任が重くなる
- 能動的に動かないと仕事は進まない
- 新しいことをやることが求められる
リストラはいつでも起こりうる
会社全体での業績が芳しくなかったり、株主からのコスト削減プレッシャーが強くなったりすると、いつでもリストラは起こりえます。
私の今までの経験では、業績がうまく出せない人や、素行に問題がある人、健康問題を抱えている人などがリストラの対象になっていました。
リストラの対象にならないように、日ごろからきちんと仕事をこなして成果を出し、上司も含めて周りと問題なく協調して仕事を進めることが大事です。
吸収合併のリスクがある
ある日突然、別の外資系企業から合併され、別会社になってしまう、ということがあります。その場合、最悪今までのポジションがなくなり、職を失うケースもあります。
もちろん、そうでないケースもあります。しかしポジションがそのままでも、合併される側の会社の立場は弱くなります。
そのため、例えば今まで使ってきた業務システムは合併した側のものに変わり、組織も変更され、上司も変わり、仕事の進め方も変わることがあります。
合併された側の社員は、「転職」に匹敵するくらいの変化を味わうことがあります。私も実際経験しました。
そうなると、合併された側の社員が辞めるケースも出てきます。新しい組織でのやり方や組織ではなじめない人がいるためです。
自分の責任が重くなる
ジョブ型の職務は、そのポジションの仕事に関して全責任を負っているということです。プロジェクトに関して何か問題が発生すれば、発生源がどこであれ、その人の責任になります。「ミスをしてはならない、成果を出さなければならない」というプレッシャーは相当なものです。
一方、仕事を成し遂げたときの充実感は半端ないです。成功すれば周りから賞賛されますし、自信につながります。
能動的に動かないと仕事は進まない
外資系企業では、何事も自分で判断して能動的に動かないと、仕事が進みません。つまり「指示待ち」の人では務まりません。
プロジェクトを計画し、関係者と協業しながら動かしていく過程で、「自ら動く」場面は数多くあります。じっとしていても誰も助けてはくれません。
新しいことをやることを求められる
結果が出ているプロジェクトであれば、新しいことをやる必要はありません。
しかし、何らかの改善や変更が必要なプロジェクトについては、そのポジションの責任者として、新しい施策を実施することを常に求められます。
まとめ
海外で働くことは、単に語学力に自信があるだけでは容易にいきません。仕事面、生活面で日本とは全く異なる状況になるためです。家族がいる人の場合は、理解を得ることも必要です。
筆者が一番のポイントと考えるのは、「仕事をうまくこなす」です。これさえ出来ていれば、あとは何とかなります。
難しい状況でも海外で働いて仕事で成果を出せれば、日本に帰国してから仕事につく場合でも自信になります。もちろんそのまま海外で働き続けても良いでしょう。
ではまた!
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